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【SHIHO,MAOブログ】第3章「ーそしてついにー」

2016.03.17

一晩、様子をみた卵達は、

私の願いを感じ取ったのか

順調に色づき始める。

 

 

あぁ。今すぐにでも私のこの口の中へと運び込みたい。

 

そんな欲望と戦いながら、

また一夜を過ごす。

  

 

 

時が来た。

 

日の目を浴びる時が。

 

  

出会った時より一回り小さくなっている卵達。

きっと、沢山の旨味を染み込ませ、

そして凝縮させたのだろう。

 

もう、その姿は

私達が欲していた

"ドングリ"

そのものだ。

 

 

 

その日スタジオへ向かう足取りはいつもとどこか違う気がした。

 

小学校を卒業し、

初めて通うであろう中学校へ向かう

始業式の様な

新鮮な感覚。

 

今でも鮮明に覚えている。

 

 

いよいよ、

私の魂の"ドングリ"

実食してもらうのだ。

 

 

その場に居合わせた6人で

ゆっくりと一粒口に運ぶ。

 

  

 

ーーー

私は幸せだった。

ただただ幸せだった。

あぁ。ずっと欲しかった"ドングリ"

すぐそこにある。

 

 

 

でも、どこか切なかった。

手に入れてしまった切なさが押し寄せる。

望んでいたはずなのに。

 

  

人はとても欲深いのかもしれない。

 

 

 

私の"ドングリ"達は

認められることはなかった。

でも、それでもいい。

私はそれでもいいのだ。

 

幸せだったから。

 

 

-END-


(MAO side.)


2日前程から、タレに浸していたウズラの卵たち。
ちゃんと味が染み込み、茶色に染まっているのだろうか。あの、居酒屋で出てくるドングリのようになっているのだろうか。


そんな不安が渦巻き、前日に一つ口に運んでしまったのだ。


(これは・・・美味い)


勝てる。
わたしは、そう確信した。


そして、ついに勝負の日がきた。

もうウズラの卵ではない、立派にドングリへと成長を遂げたものたちを見せ合う。

 

手前が私のもので奥がSHIHOさんのである。


写真で見ても分かるように、私のドングリは色が薄いのだ。

(これは・・・負けたかもしれない)

圧倒的な色の濃さに、私は怯んだ。


あんなの・・・絶対美味しいに決まってる。

あんなの、絶対美味しいに決まってる!!!


実食タイムが始まる。両者、ドングリを口に運ぶ。

あちらのドングリは、その見た目通り味がしっかり入っており、酒飲みには持ってこいの味であった。居酒屋で食べたことのある味だ。

一方、私のものはそれに比べて味が薄い。が、酒飲みではなくご飯を好んで食べる人に向いているような味ではあった。


ここで、思った。料理というものは凄い。
同じものを作らせても、人の好みによってこんなに味が違うものなのか。
わたしは、素直に感動してしまった。


結果は、審査員に酒飲みが少なかったのもあり私のドングリを選んでもらえた。

嬉しかったが、しかし、勝敗などどうでもいい。

私は完全に、ドングリに心を掴まれていた。


心を込めて、時間をかけて浸した。それに、答えるように染まっていった。そんなドングリを愛おしく感じた。


私はきっと、また手に取るのだろう。
懲りずに最高のドングリを作る為に。